「徳川家康の祖先松平氏発祥のまち・豊田」をテーマにした歴史講演会が3月11日、豊田市美術館(豊田市小坂本町8)で開催された。
千田嘉博教授、豊田で歴史講演会「城から考える徳川家康」 豊田市長も聴講
同講演会は、大河ドラマ「どうする家康」放映を機に、徳川家康の祖先・松平氏発祥のまちである豊田市内の歴史に関心を持ってもらうとともに、豊田市内に150以上存在する戦国時代の城(城跡)が持つ魅力を再発見し、身近に感じてもらおうと、ツーリズムとよたが主催した。
同市出身で、中世・近世城郭の考古学的研究を行い、日本各地の城の発掘調査・整備の委員やテレビの歴史番組に出演している奈良大学教授の千田嘉博さんを講師に迎え、「天下人への道-城から考える徳川家康-」と題した講演が行われた。
地元の歴史愛好家ら150人余りが来場した講演で、千田さんは「古代以来、京都を中心に文化・宗教・有力者が集まり、全国の金や権力が京都に集まっていたが、戦国時代になり地域の生産力は地元で活用する方向に変化したことで、地方に文化・経済が花開いた。戦いがあり良い時代とは言えないが、今日まで続く文化が生まれたという点で意義がある。豊田市には戦国時代の山城の先行事例が残っており歴史的に貴重な存在。松平氏遺跡である松平城をはじめ、豊田市の城は徳川の始まりが分かる」と述べ、市内に点在する城跡の価値を訴えた。
このほか、同市小原地区の市場城本丸跡に残る石垣が「重ね積み」を採用していることや居城を移転して政治を行う点などは織田信長の影響を、敵を撃退するのに効果的な「馬だし」は、騎馬部隊が強かった武田信玄から学んだのではないかと話した。豊臣秀吉と戦った「小牧長久手の戦い」の後、和睦を結べず家康にとって最大のピンチを迎えた際、松平地区にある大給城をはじめとする三河地区の城を決戦に備えたことなどを紹介するなど、城から見た家康の歩みについて独自の視点で解説した。
講演の終盤には、「豊田市内にある城は家康を城から考えるのに高い価値を持つが、基礎的な調査や整備があまり進んでいない。全国的な価値がある豊田市内の城を保護して、まちづくりにどう生かすか、豊田市に注目している」と講演会を結ぶと、会場で聴講したツーリズムとよた会長の太田稔彦市長が市場城を調査する意向を表し、講演会を締めくくった。